7:Niche Apportionment and Relative Abundances of Coexisting Species

つづき


7.2.2 Niche apportion models

MacArther fraction and random fraction models

MacArthur fraction modelはbroken stick modelによく似ているが、ニッチ分割において(simultaneousであるよりもむしろ)sequential processをその前提に考えている。(fig7,7)
集団中の全ての種が侵入の対象になり、侵入される確率はそれぞれの種のabundanceもしくはniche sizeによる。従って高いabundanceの種の方がニッチをより断片化されやすい。新しい種の起源はspeciationの割合にしたがって祖先種の分割によると考えられ、その割合はpopulation sizeや種のabundanceに直接比例する。
このモデルの利点は、simultaneous breakage(broken stick) model(Tokeshi 1993b)の検証が概念的・技術的に困難であるのとは対照的に、sequential MacArthur fraction modelは進化的背景においてさほど非現実的ではない(cf. Jablonski 1987)。特に生態学的にtightly knitな集団やtaxonomically close speciesではさらに分析をする価値があるだろう。

random fraction modelはMacArthur fraction modelによく似ているが、ニッチ分割における確率について少し異なる(fig7.8)。
このモデルでは現在のabundanceやniche sizeに関係なく、集団中のどの種においても同じ確率で(ランダムに)ニッチ分割が起きる点でMacArthurのモデルと異なる。

speciation eventsについて考えるとこのモデルではある種が2つに分かれるのとニッチサイズとは無関係である。このことはそれほどおかしな考え方ではないかもしれない。
speciationの割合がニッチの大きさに比例していることを支持する証拠はないし、相対的に大きなニッチにおいては、優れた移動性や十分に広いgeneralistな食性(したがってspeciationを効果的に抑制する)によってspeciationが起こらないのに対して、狭いニッチにおいてはspecializationがよりおきやすいことでspeciationが起きやすいこともあり得る。このことと広いニッチにおいてはhabitatの断片化と孤立が起こりやすいという正反対の傾向(必然的にspeciationにつながる)とを合わせて考えるとspeciation probabilityとniche sizeとは関係がないのかもしれない。
いくつかの集団に見られる証拠。これらのパターンはrandom fraction modelと見分けがつかない。

random fraction modelと大集団での重要な2つのモデル(Sugihara's model,the power fraction model)との関係については7.3.2を参照。

Random assortment and composite models

ニッチ/資源利用と関連した多様性の増加のひとつとして、fig7.1aのようなopen-ended systemにおける現存の種が利用していない新しい資源を利用しはじめるものが示された。
ここでは異なるニッチでは(特に利用できるそれぞれのニッチのquantity/spaceには)基本的に関連がない。このことは異なる種でのabundanceは事実上互いに独立となることを意味する。
local abundanceが、ある生態学的な要因によって一時的なスケールでほぼランダムに変化するようないくつかの集団では似たような状況が見られる(Chapter10,Tokeshi 1994)。このような環境ではniche spaceは完全にはいっぱいにならず(filling up)、一時的で不定な全体のniche spaceをおおざっぱにtrackする。
これがrandaom assotment modelとしてモデル化されており(fig7.9)、いくつかのchironomidの集団の数的バイオマスのデータと合っているようにみえる。

興味深いことに、種が任意の割合で全niche spaceの外側に開拓を行うと、niche filling processによるrelative abundanceのパターンが作り出される(Tokeshi 1993b)。しかし注意しなければいけないのは、このことがあてはまるのはもしi番目のsegmentの平均値を考えたとき、このrankが、開拓(carve)の順にi番目のsegmentが(i-1)番目のsegmentよりも大きくなり得るようなときのみである。このような条件では、このモデルは資源全体において限界が存在することを示唆する。(究極的な限界として地球を考えれば妥当である)

Tokeshi(1990)はこのモデルを他のニッチ配分モデルとは区別していたが、このモデルはニッチ配分のモデルのvariationと考えることができる(Tokeshi 1993b)。
それ以前のモデルとの概念的な違いは、異なるニッチ分配の方法を合体させた複合モデルであることである。これは種の集団が1つでなく2つ以上の異なるプロセスからなるという考えに由来している。Tokeshi(1990)の複合モデルでは、集団においてよりabundantな種は1つのニッチ配分プロセスからなり、less abundantな種ではプロセスのランダムな組み合わせによって形成されると想定していた。数の多い種においては数の少ない種よりも競争的な相互作用が広まりやすい。

7.2.3 Interpretation and testing

これまで説明してきたニッチ分配のモデルはおおまかな2つの解釈にわけられる:

  1. 'species-oriented'な解釈
    ここでは種の順番が同じというのはabundanceのrank順を考える。
    種A(most abundant)、種B(second)、C(3番目)…という関係を全ての集団に当てはめると、最も簡単に思いつくのがdominance pre-emption model(hierarchyがニッチ支配の順で形成される)である。
  2. 'process-oriented'な解釈
    種とrank orderとには相関がないと想定する。
    種Aのrankは時間と場所の違いにより種間で変化する。このことはspecies abundanceが必ずしも大きく変動しないことを意味し、種間のrelative abundanceと特定の種のhierarchyが関連しないことを意味している。

これら2つの解釈はニッチ配分の違いを強調しているが、自然界における大部分の集団ではこれら2つの要素を集団ごとの割合で両方持っているようだ。それゆえ、'replicated'な集団でのspecies abundanceのパターンの分析は容易ではない。
replicationの問題はstochasticなニッチ配分のモデルでデータを扱うときには重要である。

stochasticなニッチ配分のモデルは簡単にコンピュータシミュレーションとして実行されることができ、モデルで予測されるパターンを比較することができる。比較的少数の種による単一のデータでのモデルの比較を目的とした、Tokeshi(1990)のシミュレーション方法はモデルと観察されたものとのランク値の比較を行っており、replicated varuesの間の差を説明でき、適切であると考えられる。
注意しなければならないのは、MacArthur fraction model(およびbroken stick model)ではunreplicatedなabundanceのデータはテストできないことである。というのは、このモデルでは全てのパターンが等しく起こりうるからである。
広く種数が異なるような集団のデータの比較には、simple Monte Carlo test(Bersier& Sugihara 1997)も有用である。

unreplicatedなデータでは、観察されたランク値はモデルからのシミュレート値の期待値 + 2SD(SDは標準偏差、95%信頼できる)で比較されてよい。別の方法としてabundance valuesのlog2の標準偏差がシミュレーションと観察されたもののデータとで比較されていて、しばしばspecies-richな集団で用いられている(Sugihara 1980; Tokeshi 1996a; Section 7.3参照)。しかしこれは小さな、もしくはそれほど大きくない集団における詳細な分析に用いるはあまりにも大雑把かもしれない。ここでの問題は異なるrank-abundance valueにおいてabundanceのlog2の標準偏差の値が同じになりうることである。


7.3 Relative abundance patterns in large assemblages

大集団におけるrelative abundanceのパターン

7.3.1 Statistical models and large assemblages

統計的モデルと大集団

ニッチ分配モデルにおいてはrelative abundance patternsの機構的説明を試みたが、この節では別のアプローチを行う。モデルと特定の説明との間に明確なつながりはないかもしれないが、統計的モデルは機構的説明のきっかけになる。統計モデルによって、因果関係は分からずとも、観察されたパターンが記述され、原因となりうる多くの可能性とを緩やかに結びつけることはできるかもしれない。

破壊されたり絶滅しつつあるspecies-richな集団のはたらきがより関心を集めており、相対的に種数の大きな集団におけるspecies abundanceのパターンについての調査はさらに重要になりつつある。歴史的にはこのような集団におけるabundance patternの調査では、その比較や記述を統計的モデルに頼っているのが一般的である。統計的モデルとして(table7.1)、the log series modelとlognormal modelが注目されている。特に後者はcommunity ecologyの理論的知見の発展に多大な影響を与えている。(数学的な詳細についてはMay 1975 and Pielou 1975を参照)

Log series model

仮に種の頻度もしくは種数(fn)は種の個体数(n)に対してプロットされる。fnは凹形のカーブで描かれ、初めは急激な下り勾配でnの増加に伴い低い値で長くのびる(fig.7.10;Williams 1964)。
これはlight trap/suction samplesのようなサンプリングにより得られた標本集団においてしばしば観察される。このような状況では,これらのlog級数で記述されたabundance patternは単に、純粋に統計的な現象として標本集団が偏っており、どのような生物学的に有意義な解釈にも当てはまらないだけではないかという疑問が生じる。この疑問は重要かもしれないが、大部分の実験調査においてその答えは得られていない。
log級数モデルにおいて、n個体を持つ種数fnはそれぞれ以下のように与えられる。

fnαXn/n

n:個体数(n=1,2,3…)
:任意のパラメータ(0<<1)
α:パラメータ、曲線の形状に依存、長く尾を引けばαは大きい。(α>0)

αはその特性ゆえにsample sizeに独立な便利な特性を持つ多様性の指標として用いられてきた(Fisher et al. 1943)。
このモデルとデータとの適合性を検証するために、この式の期待値を求め観察値との比較が行われた。
また、species richness(S)とサンプルにおけるサンプルサイズもしくは個体数(N)との関係に由来するもので以下のようなものが考えられる。

αln(1+N/α)

これはspecies richnessがサンプルサイズの増加に伴って無限に増加することを示唆しているが、実際の生物集団、空間スケールでは有限である。
理論的には、このlog series modelはgeometric series modelといくらかの関連があり、rank-abundance modelがlog級数で表されるとき、それと大まかに直線的な関連を持つ。実際に、明確なデータの面からこの推論がどれだけ正しいかはっきりしてはいないが、前者は後者にいくつかの確率論的側面を組み込むことに由来することが指摘されてきた(Boswell &Patil 1971)。

log series modelはそれ自体が機構的なプロセスを導き出すわけではなく、そういった意味からいえば統計的なdiscriptorにすぎない。

Lognormal model

種の頻度もしくは種数が、population abundanceの2を底とするlogで表現されるとき、つまり集団の倍加が連続的なabundanceのクラス('octaves';Preston 1948,1962)により表現されるとき、つりがね型の曲線がしばしば得られる(fig.7.11).
R番目のoctaveにおける種数SRは以下のように与えられる。

SRS0 exp(-a2R2)

|R:abundance class,ある集団中のあるサイズの種数を持つ種が見られる頻度、R=0のときに最頻値。
S0:R=0のときの種数、つまりその集団において最も高い頻度で見られる種数。
|a:曲線の幅の逆数;a=(2σ2)-1/2

この曲線(the 'species curve')におけるoctaveの最大値(Rmax)はしばしば'individuals curve'における最頻クラス(RN)と一致する('individuals curve'は各octaveにおける総個体数をプロットしたもの;fig.7.11)(Preston 1962)。つまり、γ=RN/Rmax〜1となる。このタイプのlognormal modelはcanonical lognormalと呼ばれ一般的に、a〜2となる。

実際のデータにおいて、lognormal curveの左側は滅多に現れない。このようなパターンは'truncated'lognormalとよばれる(fig.7.12の一番上)。サンプルサイズが増加すると、曲線が左側に現れてくる(fig.7.12)。このことはlognormal modelがサンプルサイズによりその形が異なり、小さなサンプルにおいてはlog series modelと見分けがつかないことを示唆している。実際、lognormalにおける'truncated'という考え方は、このモデルが広いパターンの幅に当てはまることを意味し、モデルの適用を拡張するとその現実性を失わせる。つまり、特定の観察されたパターンについて表しているよりもむしろlognormalのとりうる形の多様性を単に見るだけになってしまう。
さらに、(canonical)lognormal modelの適合性が、異なるrankのrelative abundanceの値について正確に言い表しているわけでないことにも注意が必要である。abundanceがoctave classのみで決定される場合、2n-1と2nー1との間のような特に大きなoctaveにおいて数的に大きな幅が存在することになる。それゆえに、ニッチ配分モデルによる分析と比較してlognormal modelに当てはめるのはabundanceパターンの分析の方法としてはかなり大雑把なやり方である。

なぜlognormal model、とくにcanonical形(γ=1)が多くのデータに当てはまるのか?
lognormal分布は中央極限定理の結果として得られ、集団が大きく、heterogeneousであると、asymptoticalyy gausianもしくは正規分布の形になるとMay(1975)は議論している。さらに、May(1975)とUgland&Gray(1982)はcanonical仮説とa〜2は大きなサンプルでのlognormal分布の数学的特質によるとしている。つまり、canonical lognormalは大部分が数学的な現象であることを強く示唆している。

Preston(1962)自身はこのモデルを単に統計的なdescriptorとして扱っており、生物学的な意味合いは持たせてない。

7.3.2 Niche apportionment and large assemblages

May(1975)の提唱とは反対にであるにもかかわらず、canonical lognormal modelが見かけ上多様な生態学的データによく当てはまることはspecies abundanceのパターンの根底に共通の生物学的なプロセスが存在するのではないかという予測を長い間もたらした。このことには3つの可能性が考えられる。

  1. canonical lognormal modelで表されるabundanceの観察パターンは統計的に作為的な物であり、実際の生物学的な現象を何ら反映していない。
  2. 観察パターンのうち一部は統計的に作為的な物ではあるが、別の一部は生物学的な現象を反映している。
  3. 観察されたパターンの大部分が生物学的な現象を反映している。
これらの区別は付けにくいが、relative abundanceの観察パターンから導かれる生態学的/進化的プロセスについては調べる価値があるだろう。。

大集団のabundance patternの分析において、二つの対照的なアプローチが出てくる。
全体的なアプローチとcommunity-specificなアプローチである。この分岐はパタ−ンとメカニズムの解釈に重要な影響を与えており(Tokeshi 1993b)、前者のアプローチは同じ支配ルールに従っている異なるcommunityを想定し、後者はパターンとメカニズムの相違を考えに入れる。固定のパラメータ値による単一のモデルを広い幅のtaxaや集団に適用することは前者のアプローチにつながる(ex:多種のデータへのSugihara's modelの適用)。対照的に、仮にcommunityのパターンの多数が平均的ならば、異なるパラメータを組み合わせたモデルを異なるデータに適用するほうがより適切である。このようなアプローチは結局もしそれが存在するならグローバルなパターンの存在についてのより強固な証拠となるようなパラメータ値の集中を指し示すかもしれない。それゆえ、community-specificな分析に従ったモデルはこの仮説を支持するのにより適しており、また簡便である。このことは大集団に適用するニッチ配分モデルの考えと関連がある。

Sugibara's model

Sugihara(1980)はもともとcanonical仮説に対する生物学的説明を行う物としてこのモデルを考えた。本質的にはこのモデルは一般的random fraction modelの特殊なケースであると考えることができる。このモデルとrandom fraction modelとは分割の割合の確率分布に関して異なる。Sugihara's modelでは、フジツボや魚などの実験データに従ったP=0.5からP=1.0の間で、P=0.75でピークを持つ三角形の確率分布を想定しているが、random fraction modelではP=0.5からP=1.0の間の統一した確率分布を用いている。さらに分轄の割合を固定して(0.75:0.25)、予測される平均的なパターンの近似をとることができるとしている(fig.7.13a)。つまり彼はabundanceの期待値と標準偏差を0.75:0.25の固定率でシミュレートして求めている。
しかし、固定率とtriangularを想定したときとでは全種数に対して、log2abundance('octave')の標準偏差をプロットしてみると同じ結果にはならない(fig.7.13b)。これはSugiharaの仮説が批判に耐えうる物でないことを示唆している(Tokeshi 1996a)。

これ以降の著者の述べているこのモデルの問題点についての指摘は理解できませんでした。

Sugiharaのモデルは実際のデータ(Tokeshi 1990)にうまく当てはまらないため、random fractionmodelとの区別は重要である。

Sugihara's modelにおける二つの重要な問題点:

  1. 分割の割合が固定であるのが生物学的に非現実的で、それが適切であるか疑わしい。
  2. もしSugiharaの(生物学的により現実的な)triangular分布の考えを採用するならばそのモデルはtriangular分布とは別の可能性を考えなければ、データと完全には当てはまらない。

Power fraction model

the power fraction modelはrandom fractionとMacArthurのモデルと密接な関係がある。
powerfraction modelにおいては分轄されたflagmentを選択する割合は、ニッチ断片のサイズをXとするとXで表される。Kは0-1の幅のパラメータである。この割合によってニッチ断片が選択された後は、他の2つのモデルと同様にランダムに2つに分割され、これを繰り返す。
Sugiharaのモデルと対照的に、このモデルは分割の割合が固定ではなくどのような割合の分割もランダムに起こりうる。
このモデルはK=0のときrandom fraction modelと一致し、K=1のときMacArthur fraction modelと一致する。

このモデルはspecies-richな集団のデータによく当てはまる(Tokeshi 1996a)。fig.7.15aにおいては大部分の集団のabundanceのlog2('octaves')の標準偏差が、K=0.05のときのモデルに±2SDの範囲に収まっているのが分かる。一般的なデータに当てはまることよりも重要なのはこのモデルが集団中におけるrareな種についての正確な評価が行われているような質の高いデータ(ex:BTO)においてもよく当てはまることである。
さらに、これらのデータの非対称性(μ3/s3、μ3はthird central moment)もまたK=0.05のときのpower fraction modelの予測と一致している。

固定のパラメータによる単一のpower fraction modelを完全なデータに適用する(つまりgroval approach)かわりに、異なるパラメータ値を持つこのモデルを異なるデータに当てはめることもできる(つまりcommunity-specific approach)。これがこのモデルがSugiharaのモデルよりも優れているところで、Sugiharaのモデルはgroval approachしかできない。
このモデルをそれぞれのデータに当てはめてみるとKの値は0と0.2の間に位置しており、このことはK〜0-0.2のときのpower fraction modelは大集団で観察されるabundanceのパターンのほとんどを説明することができることを示唆している。

K〜0.05またはK〜0-0.2のときのこのモデルがデータによく当てはまることは、集団が連続的なニッチ分配のプロセスにより形成されることを支持している。この連続的なニッチ分割における分割の割合は、大きなニッチもしくは高いabundanceを持つ種でわずかだが高い傾向がある。
高いabundanceや地理的に大きな幅を持つ種ではより新しい種を生み出しやすく(Darwin 1859)、化石証拠がそれを支持している(Jablonski 1987)。
ある種を結果的に2つに分割するような生態学的な障壁はどのような種においても見られ、それによりこのモデルでも想定しているように分割の割合も広い範囲で変化する。
これらのことから、このモデルは生態学的及び進化的な観点の両方を持っている。

Kの幅が0-0.2のときのこのモデルの適合性は、平均的に、speciation/invasionのおきる確率がその種の現在のabundanceの指数(<0.2)に比例していることを支持している。このことは、集団中で正確には種が変化しているかもしれないが、現時点でのcommunityにおけるabundanceのパターンは進化的な時間を反映しているという想定に基づいている。

このモデルにおいてパラメータKがしばしば0に非常に近い値になり、このことは多くのケースにおいてrandom fraction modelが種のabundanceの表現に適していることを示唆している。


7.4 Variability and dynamics of relative abundance

7.4.1. Variation in relative abundance patterns

集団におけるabundanceのパターンがどのような物であるにせよ、時間経過と異なる時間・場所での異なる集団でパターンは変化する。しかし、この話題に対する情報は現在のcommuityにおいても過去のそれにおいても乏しい。
relative abundanceの違いに起因する物として、以下のような物が挙げられる。

  1. ランダムな変動
  2. 異なる時間または異なる集団での異なる要因やプロセス
  3. それらの組み合わせ
このような違いを分析するのに、一連のモデルは異なる集団内や集団間におけるパターンを説明するのに重要な役割を果たす。
種数の小さい集団では統計的な起源を持つモデルではなくニッチ分配のモデルが比較に用いられる。、一方で、種数の大きな集団ではその両方のモデルにより分析されうる。
集団でのspecies richnessの幅を調べると、abundanceのパターンは以下の物に当てはめることで比較を行うことができる。
  1. geometric series modelのパラメータk
  2. 異なる(stochasticな)ニッチ配分のモデル
  3. power fraction modelのパラメータK
一つ目のアプローチは、このモデルを用いてMotomura(1932)が行おうとした、集団の「複雑さ」の記述である。この場合、このモデルは集団のrank-abundanceのデータに一様に当てはまり、kの違いが観察できる。
二つ目のアプローチでは、異なるstochasticなニッチ分配モデルをそれぞれの集団に当てはめ、モデルごとの適合性を評価する。
3つ目のアプローチでは、異なるrankのabundanceの値もしくはabundanceの値のlogの標準偏差のどちらかについて、power fraction modelの適合性が最大になるような可能性について考える(7.3.2でふれたように前者の方が詳細な調査・比較には適している)。

taxa的によく似た集団でさえrelative abundanceは全く異なる。
熱帯の樹木の集団でのrank-abundance曲線(fig.7.16;Hubbell 1979)の例では熱帯の種の傾きは温帯の集団の物に比べてどのようなabundanceでも緩やかである。
species richnessがより大きい集団ではrankにともなうrelative abundanceの現象はより緩やかである。
このことは、species-poorな植物集団がspecie-richな集団に変化していくような例でも同様に観察される(fig.7.17;Bazzaz 1975)。
これらのパターンは集団中の種数が増加すれば、平均のrelative abundanceが減少するという単純な効果によるだろう。
他方で、species richnessの高い集団のrank abundanceが常に緩やかな傾斜であるとは限らない。
species richnessが増加したとき(S→S+c)次のようなことが考えられる(fig.7.18):

  1. 全てのranks/speciesのabundanceがより均等になるようにシフトする(図の左)
  2. c種が入ってきた時点から不連続なカーブを描く(図の右)
いろいろな可能性はあるが確率論的には前者のパターンがより一般的であるだろう。またその反対に、集団中で種が減少すれば傾斜は増加するだろう。

傾きの変化はともかく、rank-abundanceのカーブの形もまたspecies richnessの変化によっても変化しうるが、このことの評価は困難である。
種数の少ない集団でのgeometricなパターンがspecies-richな集団ではlognormalなパターンに推移するという考えは、数の増加による統計的な現象にすぎず、比較的小さな集団においてgeometric series modelが当てはまっているように見えるのは、rank orderにおいて扱うrelative abundanceの数がlognormalに推移したときと違って少ないからであるにすぎないと考えられるかもしれない。
この考えはコンピュータシミュレーションによって、集団中のspecies richnessを減らしていったときにrank-abundanceのカーブがlognormalの形からgeometricの形に変化する(Hubbell 1979)ことから棄却できる。

似たようなspecies richnessを持つ集団を比較することでspecies richnessの差異による効果を減らしたり避けたりできる。このことは集団間の比較についてだけでなく、単一の集団における一時的なrelative abundanceの調査、つまり集団内の比較においても当てはまる。
これらのことから、power fraction modelを含むstochasticなニッチ分配モデルによる機構的な比較は、統計的なモデルがパターン間の区別を行いにくいのに対して、有用なアプローチである。この問題に関して、モデルではうまくいかないような場合にもKolmogorov-Smirnov testのような統計的な検定によって集団間のrelative abundanceのパターン比較を行うことはできる。

時空間的スケール及び異なるtaxaグループでのrelative abundanceのパターンの差はChapter4,5で議論したように、species richnessにおける差に比べてあまり理解されておらず、さらなる調査が待たれている分野である。

7.4.2. Commonness and rarity:most species are rare

relative abundanceを調査するといくつかの種がcommonであり、その他の種はrareであることが分かる。希少性は生物の保全に関連してより重要である(Gaston 1994)。
実際にその種がrareであるかcommonであるかは種間での比較が必要であるが、commonnessとrarityは集団でのrelative abundanceの概念と絶対的な関連性を持つ。

rank-abundanceのダイアグラム(fig.7.3)もしくはoctaveの頻度ダイアグラム(lognormalの分析;fig.7.11)をみるとrare・commonな種は容易に分かる。rarity・commonnessについてabundanceと空間分布は一般的に一致しており、commonな種は広い空間的な生息場所を持っており、それゆえに高い頻度で見つけられるのに対して、rareな種では点在的に空間を支配している。空間的にtruncatedなサンプル集団でのrelative abundnceを考えたとき、commonnessおよびrarityはサンプリングを行う地域における種の分布に依存した空間的パターンの差異に左右される(Rabinowitz 1981)。
つまり、あるサンプル集団において頻繁に見られる種は他の集団では見られず、単にそれはパッチ状に分布していたからにすぎないかもしれない。
小さな空間スケールにおけるrarity・commonnessが大きな空間スケールでのそれを反映しているとは限らず、サンプルを採集する地域でrelative abundanceが均一でないような場合、common/rareについての認識はサンプルを採集する地域の空間分布に依存している。

それにも関わらず、しばしば大部分の時間における大部分のcommunityのほとんどの種がrareである。
このことは熱帯雨林のようなspecies-richな集団で明瞭に見られる。

反対にrareな種の割合が高い割合を示すような例もある。 3つのパラメータ(補充が可能、集合性を持つ、死にやすい)を持つ種が固定のhabitat内でコロニー形成のプロセスを繰り返すようなシミュレーションモデルから、Hughes(1984)はこのようなパターンを得ている。
概念的に似ているが、habitatのコロニー形成とlocalでの絶滅の連続によって集団中に多くのrareな種が存在するという説明が試みられている(Tokeshi 1992).

これらのabundanceパターンは通常の対照的なlognormal modelには当てはまらないが、それでもtruncatedなlognormalには当てはめることができるだろう。
他方で、しばしば、もしくは広い範囲でrareな種が大きな割合で見られる場合、いくつかのspecies-richな集団のabundanceパターンについてはlognormalは基本的に当てはまらないと言う解釈が成り立つ。このような場合、relative abundanceに関連する要因について、さらに厳密な再評価が必要だろう。
今のところ、lognormal modelが真に多目的にかつ生物学的に妥当に自然集団でのabundanceのパターンを説明できるようだ。power fraction modelを含めたニッチ分配モデルはこの観点からさらに関心を向ける価値がある。