chap 10 :Adaptive Feeding Behavior

前回の続き



 How Many Prey per Trip?

最適化理論は、餌捕りの決定について適用できる。
雛のために鳥が餌探しを行うとき、持ち帰る餌の量について判断しなければならない。
     集めた餌が多いほど、くちばしに既に餌があるため効率は下がる
     餌をとるにつれそのパッチ内の餌は減っていく。
餌探しの最適な中止時間は、時間あたりの利益−コストの割合が最大となる点である。

最適化モデルの仮定は仮説の性質に影響する。

●ムクドリの親鳥が雛のために餌を集める行動
    仮定1:餌探しのエネルギー的な利益を最大にしようとする
    仮定2:雛が得るエネルギー的な利益を最大にしようとする
この2つによる結果はよく似るが同一ではない。

1: 餌探しからのエネルギー収益(yield))を最大にする場合。

   Yield = NV/T

| N:集めた餌の数
| V:餌の利用できるエネルギー
| T:餌探しと餌を巣に運ぶのに費やした時間

2: 雛の成長のために利用できるエネルギーを最大にする場合。

    Family gain = NV/T - Ep - Ec

| NV/T: 収益
| Ep: 親が餌を集めるために使うエネルギー
| Ec: すべての雛が現在の体重を維持するために必要なエネルギー

この2つの仮定の実験的な検証。
雛を持つ野生のムクドリがmealworm dispenserに来るように訓練した。

ムクドリが一度に持ち帰る餌の最適な数は餌場と巣の距離の関数になっていて、巣から遠いと移動時間が長くなり、餌を捜す時間が全体の収益に対する主な要因でなくなる。

 Family gainモデルによる巣に持ち帰る最適な餌の数は、
     巣のすぐ近くの時   :3
     10-20秒かかるとき    :4
     30-60秒かかるとき    :5
     数分かかるとき    :6
 Yieldモデルによる予測はこれとは違うものになった。

実際の観察結果とfamily gain modelで予測した数が63%一致したが、yield modeによる予測では50%程度だった。
これにより、ムクドリの主な目標は雛の成長を促進することであると結論づけた。
 
ムクドリはいつも最適な判断をしているわけではない?
仮に1個/5secで餌を持ち帰ると時間による減収がなくなるので、巣の距離に関係なく7−8匹の餌を持ち帰ればよいはずである。
        ↓
この戦略では餌場までの距離が近いか遠いかが収入を最大にする。

実際には、近いとき:2−3匹、遠いとき:持てるだけ捕まえる。(fig 30)
つまり、理論と現実は一致しない。

多くの餌を運ぶコストを加えた検証
餌を持てるだけ持っても成鳥の体重は1%しか増えないが、それでも効率的な飛行を妨げうる。
餌が多いほど巣に戻る時間は長くなり(fig 31)、代謝コストも大きくなる。
 

実際の結果から予測の見直しを行うことで、より動物の行動について分かる。
 


 Consuming Food

餌を狩り、狩り、捕らえて仕事は終わりではない。

●盗人予防
ライオンはヌーやシマウマを倒した後でさえ、しばしば食事の前にプライドの外からの盗人に対処しなければならない。

●毒の回避
毒を持った餌を捕まえたらその毒を何とかしなければならない。
 


 Preparing Food

捕まえた餌は食べる前にさらに準備が必要である。
northwestern crowは貝を食べるとき、その貝を開けなければならない。彼らは貝をくわえて飛び上がり空中から落とし貝殻が割れたら中身を食べる。
この行動の適応的意義: カラスのくちばしでは貝殻は堅すぎて割れないため、岩に落として割る。

●カラスの餌決定についての詳しい分析
カラスが貝を食べようとするとき、そこには多くの選択肢が存在する:
        …貝の大きさ、貝を落とす高さ、一回で壊れなかったら何回続けるか?
 
実際の観察結果
    (1)カラスは約3.5-4.4cmの大きさの貝のみを落とす
    (2)約5mの高さから落とす。
    (3)たくさん飛ぶはめになっても割れるまで続ける。

仮説:カラスは餌探しにおいて単位時間あたりに食べる貝の量を最大にするような最適な判断をする。
この仮説からの予測:
    (1)大きな貝は小さなものと較べて5mの高さから落とすと壊れ易いはずだ。
    (2)5mよりも低いところから落とすと壊れる割合は低くなるが、5mより高くてもあまり開きやすくはならない。
    (3)既に落とした回数と貝の壊れる割合は独立である。

仮説の検証
大中小の貝を集めてきて異なる高さから落とした。(fig 32)
その結果、以下のことが分かった。
    (1)大きな貝は中・小の貝に較べて、壊すのに必要な高さは5m以下だった。
    (2)5mになるまで落とした貝の壊れる割合は増加したが、非常に小さな貝では向上は見られなかった。
    (3)大きな貝の壊れる割合は約1/4である。壊れにくい貝を交換しても時間とエネルギーがかかり、あまり特にならない。

カロリーについての見積もり:
大きな貝の時、正味のカロリー収入は 2.0 - 0.5 = 1.5kcal
中サイズの貝の時の収入は-0.3kcal、小さいときはさらに赤字となる。

大きな貝以外を全て捨てるカラスの行動は適応的で、落とす高さの選択と失敗を気にせずに続けることにより餌から最大限の利益を得ることができる。
 


 Where to Consume Captured Food

 エネルギー的コストは餌の選択に影響を与えるが、いつも主要な要因であるわけではない。

●Chickadeeの隠れる行動のコスト−利益についての研究:
Chickadeeは多くの天敵のいる小さい鳥で、彼らは外で餌を食べず餌を確保すると隠れ場所に隠れてしまう。

隠れ場所から2,10,18mの所に餌を置くと、もしこの鳥の行動が単に食料の収入を最大にするものであれば、隠れ家からの距離に関係なく餌場で餌を食べ続けるはずだ。。

実際の結果:

 餌を殆ど持たずに、安全な隠れ家まで戻った。隠れ家にいる傾向は、鳥の隠れ家に戻る時間的・エネルギー的なコストが少ないほど増加した。

●Chickadeeの隠れようとする傾向は、捕食者の存在を感じたときに増加した。
人工の捕食者を見せる実験(fig 32)

 偽物のタカがChickadeeの近くを通り過ぎると捕食者のいないときに較べて、コストは増えるにもかかわらず、さらされた場所にある餌を食べる前に隠れ家に運ぶ傾向が強くなる。

 この鳥は、近くにいる捕食者を避けるために自発的に餌を捜す効率を犠牲にする。
 


 When to Eat Dirt

カロリーだけが動物の食料の選択に影響を与える要因ではない :消化しにくい餌でも捜すことがある。
チンパンジーの例: 抗生物質や薬として、ある種の植物を食べると信じられている。

●世界中の多くの社会で起きる、人間が泥を食べる行動についての研究
 たいていの土食いはカロリー価値のない粘土を集めて食べることに時間やエネルギーを費やす。

カロリー収入の最適化の考えに反するこれらの習慣について説明する多くの仮説が出されてきた。

非適応主義者による病理学仮説
 泥を食べるという行動は機能上何の意味も持たない常軌を逸した行動である。

適応主義者による無毒化仮説
 ある種の食べ物を無毒化するために粘土を食べる、それゆえに栄養的な価値が向上する。

病理学仮説は、相対的に少数の錯乱した個体のみが粘土を食べると予測した。
様々な文化でドングリ(高濃度のタンニンを含む)や芋(毒性アルカロイドが多く苦い)を食料にしている。
        ↓
粘土によってこれらの食物をよりおいしくしたり、毒性を低くする。

無毒化説の比較検証:
人間と無関係な動物でも毒を持つ餌を食べる動物は粘土を捜すか?
        ↓
red-and-green macawは毒性の高い餌を食べた後、川堤にむき出しになっている粘土を食べる事で、危険な食べ物の栄養分を利用可能にしている。(colr plate 12)