「数理生物学入門」(巌佐庸) 七章 「空間分布と生物拡散」

     教科書の補足的なレジメです

 

[7.1 ランダムな動き: 拡散]

 

あるniにおけるフラックス(J)は拡散係数(D)を用いてで表すことができる。

空間が連続変数xによって表される場合のフラックスは

a0で、

これを(6.1)式に代入すると、nの時間変化は、

という拡散方程式(diffusion equation)になる。[→代表的な解とその意味、演習7.1]

これは、個体ごとに成長するばらつきをもった生物集団のサイズ分布を表す(6.11)式、

が、平均的な成長速度[g(x)]と死亡率[u(x)]の項が0で分散[k(x)]2Dである場合に対応している。

 

 

[7.2 侵入者の広がり]

生物が増殖しながら侵入する場合を考えたとき、上の(6.11)式についてg(x)=0の代わりに個体群の増殖を表す項を付け加える。たとえば個体群がマルサス係数rで指数増加する場合、

となる。[→代表的な解、演習7.2]

このとき、侵入生物の波が伝播する速さは増殖率rと拡散係数Dによって、

と導かれる。[→演習7.3]

 

 

[7.3 境界条件]

プランクトンの増殖と移動を偏微分方程式(7.3)であらわし、両端の密度をゼロとする吸収境界条件

n(0,t) = n(L,t) =0

を与える。このとき(7.3)式と(7.6)式を満たす代表的な解は、以下の(7.7)式で与えられる。[→演習7.4]

このときパッチサイズLについて、区間(0,L)でのn(t)は、

このn(t)を時間微分して、

したがって、

のとき、

のとき、

となる。のときのLを最小パッチサイズ(Lc)と呼ぶ。

 

 

[7.4 伝播する波の速さ]

 

[7.5 方向性のある移動分散と密度とともに強まる分散]

(6.11)式でとすると、第一項としてポテンシャルの低い方へ移動する傾向が加わる。

増殖率r(x)が場所ごとに決まり密度依存しないとき、もし拡散係数が一定であるならば、

で表される個体群密度nの値によって無限大または0になる。

次に、Dが密度依存する場合D=βnを考え、増殖率r(x)で与えると(7.10)式となり、(7.11)式の分布が平衡解になる。[→演習7.5]

 

 

[7.6 空間的棲み分け]

(7.11)図の例における各係数を(7.12)式の拡散項に当てはめると、

つまり、第1種は環境ポテンシャルの低い好適な場所に分布するが、第二種はそれを避けるように分布する。

 

 

[7.7 空間パターンの形成]

(3.3)式のそれぞれに拡散項を加えると(7.13式が導かれる。