研究計画案第030602号

 

第一案.動物プランクトンの栄養塩リサイクルの局所的効果が湖沼系の生物多様性に与える効果(動物プランクトンの個体ベースモデル化に関する案)

 

研究意義

1.湖では主に窒素とリンの2種類の栄養塩が制限となっている

2.従来のモデル研究による予測より、共存できる種数は利用する資源の数に規定される。(Tilman,19xx)

3.しかし上述の予測は自然系において多種共存が成立していることと反している。

4.この問題について、空間構造を捕食者によるリサイクルを考慮すると湖での多種共存がモデル的に達成できる可能性がある。

 

背景

1.植物プランクトンの共存には資源比率が重要である。

2.動物プランクトンの排出は水系内部における大きな栄養塩供給源である。

3.動物プランクトンによるリサイクルは空間的には局所的にしか働かない。

4.従って植物プランクトンが局所的に利用できる栄養塩の量と比率が大きく異なる可能性がある。

5.系全体を見渡したとき、資源の量と比率の空間的不均一性は植物プランクトンの共存に大きな影響を持つことが考えられる。

 

目的

動物プランクトンについて個体ベースモデルを構築し、捕食者の栄養塩リサイクルの局所的な効果が多種共存の鍵となることを示す。

 

方法:モデル案

1.植物プランクトンに関しては格子あたりのバイオマスを種ごとに炭素量で記述、種間競争と捕食−被食の関係式はAndersen(1997)に準じる。

2.動物プランクトンの成長について個体ベースモデルとして記述。

(1)成長と捕食量の算出はAndersen(1997)を元にする。

(2)増殖(個体数増加)は炭素量が閾値を越えた時点で無性生殖を行うと仮定する。有性生殖は考慮しない。

3.動物プランクトンは一定時間で格子間をランダムに移動する。

 

目標

1.栄養塩量と栄養塩比率(N/P)についての空間分布と系全体の植物プランクトンと動物プランクトンの種構成を観察する。

2.二次元の俯瞰平面について空間を考慮する上記のモデルと無次元での群集モデルで結果を比較する。

3.空間構造を考慮したモデルで平衡(?) に達したときの動物プランクトン種数−植物プランクトン種数について関係性を得る。

 

論点

1.動物プランクトンの移動速度と物質(と植物プランクトン)の拡散速度が系の生物多様性に与える影響について

2.動物プランクトンと植物プランクトンのそれぞれの初期種数が系の生物多様性に与える効果について

3.湖の栄養塩負荷レベルが多様性に与える影響について

 

作業:現在1について実行中

1.動物プランクトン部分について個体ベース化

(1)各要素に用いる基本式の決定。形質間のトレードオフや動物プランクトンでは移動を扱うために形質に関してはできるだけ簡略化する。

(2)実験に用いる植物プランクトンと動物プランクトンの形質セットについての検討。特に植物プランクトンについては最強の一種でおしまいとなっては面白くも何ともないのでそこらを何とかする。

(3)トレードオフに関するまとめ。何に対して掛けるか、どのように掛けるか、理論的に整合性がとれているか、など。

2.作業1を元に格子空間と動物プランクトン個体の移動を加味したモデルの実装

3.動物プランクトン一種のとき共存可能な最大の植物プランクトン種数について、物質拡散速度と移動性動物プランクトンのN/P要求比率の影響性を調べる。これを第一段階とする。ここで得られた結果を以降のコントロールとして用いる。

4.第一段階で得られた結果を元に、論点の2と3についてのプランニングを行う。

 

作業日程:年度内の投稿論文完成を目標とする

1.【6月上旬】 作業1について整理して相談に行く。見通しが立ちしだい作業2に移行。

2.【7月上旬】 陸水学会(9月/岡山)に発表申し込み。

3.【7月下旬】 作業3についての結果のまとめ、作業4へ移行。

4.【8月下旬】 結果のまとめと発表の準備

5.【9月下旬】 論文の作成開始

 


第二案.湖の形とサイズが系の生産性を群集構造に与える影響

 

研究背景と意義

1.湖沼の形やサイズは水の流れに大きな影響をもつ

2.しかしこれまでのモデル研究では湖沼の形やサイズについて十分な注意が向けられていない。

3.また、水の流れが藻類の群集動態にどのような影響を与えるかについてよく分かっていない。

4.これらの問題について流体モデルを用いることで湖のプランクトン群集動態に湖の形とサイズがどのように影響するかを予測できる。

 

目的

湖沼の物理輸送に関して流体計算を用いることで、プランクトン群集動態と空間分布に湖の形とサイズの違いがどのような影響をもつか議論する。

理想的には多種共存に関して何らかの示唆を与えたい。

 

方法

1.植物プランクトン・動物プランクトン各種についてバイオマス濃度を炭素量で記述、動態はAndersen(197)に準拠。

2.湖の物理輸送に関して数値流体(NS:κ−ε)で解く。(現時点では二次元俯瞰平面)

3.湖の形の複雑性についてフラクタル次元の増加を指標として用いる(ことができないか?)

?.流れの「吹き溜まり」と沈降の効果について考慮?

 

作業

(検討中)

 

目標

湖の形の複雑性と生物生産性や共存条件との関係性を得る

湖の大きさと生物生産性や共存条件との関係性を得る

 

論点

湖の形やサイズは湖沼のプランクトン群集動態にどのような影響を与えるか。