[目的など]

(1) 野外での水質管理のための操作は環境を劇的に改変し、また予期しなかったような効果が現れうることが指摘されている(Van Donk et al.,1990に詳しい解説がある)。
 本研究では、湖での流路の違いによる系の個体群動態への影響について特に植物プランクトンの動態の変化に着目する。系の生産性と優占種(競争の勝者)への水の流れの影響を予測するモデルを用いて、湖沼において生活廃水のバイパシング等の河川工事や魚道工事といった流路の改変が水質(ここでは透明度=PP炭素量と考えて)に与える影響ついて予測を行う。

(2) 動物プランクトンが植物プランクトンの動態に与える多面的な効果(捕食、栄養塩再循環、etc.)が空間的・局所的に異なることを考慮することで、操作による水質管理において主要なテーマである操作の効果の安定性と持続性(Burge & Stadelmann 2002)についての予測を行う。

[得られている結果]→下図を参照

(1) ZPのいないとき(図1)、流路の違いによって
 1:PP同士の共存に影響がある(共存可能 or 排除)
 2:競争の勝者が変わる
 3:系全体での生産性そのものが変化する(?)

(2) ZPのいるとき(図2)、流路の違いによって
 1:系の持続性が変化する(崩壊 or 維持)
 2:PPの共存条件が変化する(共存可能 or 排除)

[ToDo]

 (1)-1,2 について、栄養塩供給量のみを変えてテスト[実行中]。
 (1)-3 について、PPを一種にして流路を変えたときの系の生産性を見る。

[三次元化のハナシ]

○現状
 水平方向の流れに関してκ−εlikeなモデルを風上差分法で解いている。
 定常化した流れのデータをもとに流速を固定して生物の計算を行っている

○これから
 垂直構造について、循環自然対流(Benardモデル)を解析。

○ToDo
 1.Benardモデルについての理解、実装
 2.κ−εlikeなモデルとBenardモデルとの空間接続スキームについての検討。もしくはモデルの改造。
 3.生物計算中での流れ計算のリアルタイム化。
 4.土壌再懸濁のモデルについての理解(随時)

 


図1、植物プランクトンのみ流路による違い

窒素量

流路(1,1)→(10,10)

流路(1,1)→(1,10)

流路(6,1)→(6,10)

N=300

N=400




図2、植物プランクトンと動物プランクトン、流路による違い

窒素量

流路(1,1)→(10,10)

流路(1,1)→(1,10)

流路(6,1)→(6,10)

N=300

N=400

N=500

 

 

N=600