Reduced light increases hervibore production due to stoichiometric affects of light/nutrient balance
J.Urabe et al. 2002,Ecology
この論文の概要生態学的な常識による予測
- 光の供給量の増加は一次生産者の生産性とアバンダンスを増加し、消費者の生産性を促進させるはず
この論文の概要理論と実際の観察での違い
- 栄養塩供給量が低い環境で光が強くなると藻類のアバンダンスは増加したが、植食者の成長は低下した。
この論文の概要仮説→予測
- この原因は、光が増加すると光合成量によって炭素量が増加し、生産者の炭素:栄養塩の比が高くなる(=エサとしての質が下がる)ためである
- この仮説が正しければ,光が減少すると光合成量が下がればエサの質が上がって動物プランクトンは増加するはずである
この論文の概要検証→結果
- 野外の湖で光と栄養塩の供給条件を変えてエンクロージャを行い、藻類と植食性プランクトンのバイオマスの変化を観察した
- 実際に栄養塩の供給量が低い環境では、光の供給が減少することで植食者のバイオマスが増加した。
この論文の概要考察
- これは、藻類の栄養塩比率と植食者の要求比率についてのミスマッチの度合い(=stoichiometric imbalance)が低下したためである。
Stoichiometryとは何か?
- エサの持つ栄養塩の比率は消費者の要求比率とは異なる
- 生産者と消費者の間の比率の違いが小さいほど、消費者にとっては効率の良いエサといえる
- 利用されなかった栄養塩は排出される (=消費者による栄養塩リサイクル)
Stoichiometryとは何か?
Stoichiometryとは何か?
Stoichiometryとは何か?
Stoichiometryとは何か?
生態系の予測を行うためには、資源のバランスを考えることが重要
- 気候の変化等によって生態系への光と栄養塩の絶対的/相対的な供給量は変化する
- 生態系の栄養的な相互作用は複数の環境要因により制約を受ける
- 生態系プロセスの変化の予測を行うとき、単一の環境変数に対する応答のみに着目するのは不適切
この研究では光と栄養塩の供給バランスに着目した
- 単一の環境要因が変化する影響についてはこれまでよく研究されてきた
- 光と栄養塩の供給バランスの変化が生態系プロセスに与える影響についてほとんど理解されていない
エンクロージャによる実験観察
エンクロージャによる実験観察
セストンの平均炭素量(C)は、光の遮蔽によってcontrolに比べて20-30%減少した。(Fig.1A, E)
セストン中のC:Chl-a比は、shadedがcontrolに比べて平均で10-20%低かった。(Fig.1B, F)
セストン中のC:P比は、shadedが常にcontrolよりも低かった。(Fig.1C, G)
セストン中のC:P比は、shadedとcontrolの両方でリンの添加量が増加すると減少した。(Fig.2B)
リン添加量が大きいcontrolと全てのshadedで増加した。(Fig.1D, H)
リンの添加量が大きいとき、shadedとcontrolの両方で顕著に増加した。(Fig.2C)
リン添加量が低いとき、shadedではcontrolに比べて明らかに大きかった。(Fig.2C)
リンの添加による動物プランクトンへの影響は、動物プランクトンの種によって異なった(Fig.3)
動物プランクトンのバイオマスはセストンのC量とは相関を持たなかった。(Fig.4A)
動物プランクトンのバイオマスはセストンのC:P比とは強い相関を示した。(Fig.4B)
Daphniaの成長速度は,リン添加量が低いとき,shadedのほうがcontrolを上回った。(Fig.5A)
まとめ
- 光/栄養塩の不均衡な供給は、食物網間の変換効率に影響を与える。
- 光/栄養塩バランスの変化は生態系の栄養塩リサイクルの割合と効率を変化させる
- stoichiometricな影響を組み込んだ生態学的理論が必要である。
- 生産者と消費者のelemental imbalanceは水界や陸上の系で広く見られる。